裁判で勝つことの意味とは何なのか
こんにちは、鈴木くんです。
今回は僕が法律事務員時代に印象に残っている担当事件について少し書きたいと思います。
こういったところから、少しでも法について関心を持ってもらえればと思います。
妻VS夫の不倫相手の慰謝料請求裁判
奥さんが依頼者で、元夫の不倫相手への慰謝料請求の依頼でした。
依頼者から相手へ慰謝料についての文書を送るも、相手は払えないの一点張り。
依頼者の感情を逆撫でするような返答もあったことから、弁護士に依頼され、訴訟で決着をつけることになりました。
(訴訟についての細かいことについてはこちらをどうぞ)
裁判は勝利!だけど・・・
訴訟を起こし、裁判が始まりました。
しかし、相手は裁判の初回期日には答弁書を提出したものの、次回以降は裁判へ来ることもなければ書面を提出することもなく、そのまま裁判は終わりました。
結果はもちろんこちらの勝訴、慰謝料を払えという請求は全面的に認められましたが、裁判所が判決を下してもなお払わず、書面を送っても返答はありませんでした。
こうなれば強硬手段です。
強制執行で回収できるかと思いきや・・・
そんなわけで回収手段として強制執行手続きを行います。
今回差し押さえるのは動産です。
本当は銀行口座を押さえたかったのですが、調べたところ残高がなかったのでやむなく動産になりました。
ちなみに動産とは、土地や建物の不動産を除く全てのものを言います。
そう言われると色々あるから回収できそうな気もしてきそうですが、実は回収のハードルは高かったのです。
1.まず家に入ることが難しい
基本的に、執行場所は相手の家です。
(執行は裁判所の執行官が執行場所へ出向いて行います。)
どころがどっこい、動産執行で家に入るには「その家が相手方本人所有の家」だとわからないと入れないんです。
家が本人所有でない場合、本人と直接話をつけて入れてもらうなどしないと入ることすらできません。
2.「本人のもの」と特定できないといけない
あくまで相手方本人の動産とわかるものでないと差押えができないので、その時点でだいぶ限られてきます。
実家にいる場合だと、家の中で「これは自分のもの」っていうものは意外と少ないのではないでしょうか。
3.お金に換えられる価値があるものでないといけない
これでとどめですね。
一般人の持ち物でそこそこに換金できるような物なんてたかが知れてます。
そんなわけで今回の強制執行は、
- 一回目は家にすら入れず終了(執行は費用はかかりますが複数回できます。)
- 二回目で家には入れたが大したものがなく空振りして終了
ってな感じなわけで、依頼事件全体で見ると依頼者が費用の分だけ損して終了という後味の悪い終わり方になりました。
あの裁判はなんだったんだろう
僕らは適切な手続きを踏み、適切に裁判所からの勝訴判決を受け、それでも依頼者の請求を実現することはできませんでした。
一方で相手は依頼者を傷つけておきながら要求をつっぱね、判決も受け入れず払うことから免れている。
この事件は、裁判の意味に対する疑問と後味の悪さだけが残る、悪い意味で印象的な事件でした。
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