民事とか交渉とか裁判とかっていう堅そうな話(裁判編)。
裁判って何なんだ!
裁判と聞くと、どんなイメージでしょうか?
テレビでやっているような、弁護士が「異議あり!」と言ったり、裁判官が「静粛に!」と言って槌みたいなのを叩いているイメージでしょうか?
はたまた長時間法廷で議論されて、そのまま判決が下されて勝ったり負けたりが決まるっていうイメージでしょうか?
裁判や訴訟という言葉に対して色んなイメージを持っている人がいるかと思いますが、もしかしたらちょっと違うかもしれません。。。
とは言っても私自身は法廷に行ったことがないのでその場の雰囲気は詳しくわからないのですが、裁判までの準備とか手続き的な部分から、こんな感じで進んでいきますっていうところを書いていきたいと思います。
まずは訴状を作るべし
裁判をするにあたってまずすべきことは、訴状を作ること。
自分で訴状を作ろうと思っても、何を書いたらいいかわからない!となるかと思いますが、一定の決まりがあるのでそれに沿ってさえいれば受け付けてもらうことは可能です。自分で書くのであれば、そのルールを守りましょう。
ルール①:最低限書くべきことを書こう!
訴状には、最低限記載されていないといけない項目があり、それがないとルールに則ってないということで受け付けてもらえません。この項目を必要的記載事項といいますが、これを書いていないことには先へ進みません。
具体的には、
- 当事者の情報(誰が誰を訴えるのか、それぞれの住所等)
- 法定代理人(当事者が未成年の場合)
- 代理人(弁護士がついている場合)
- 請求の趣旨(何を裁判所にしてほしいのか)
- 請求の原因(請求をするに至った原因)
が必要的記載事項とされています。(民事訴訟法第133条)
ルール②:訴訟の金額を決めよう!
訴訟を起こす上で、訴訟物の価格を決める必要があります。これを訴額というのですが、「訴訟の中で主張(請求)している利益を金銭的に評価した価格」と言えます。
例えば、「500万円貸して返ってこないから500万円払え!」という訴えがあるとしたら、訴額は500万円となります。
金銭の貸し借りによる訴訟であればその金額に基づいて算定できますが、単に「離婚しろ!」とか「結婚は無効だ!」とかっていう内容の訴訟の場合、そこにお金は発生していないので訴額を算定する基準がありません。
そこで、お金以外の請求の訴訟(非財産上の訴えともいいます)の場合は、訴額を一律160万円と定められています。
なぜここまでして訴額を決めなければならないのかというと、訴訟を起こす際に訴額に応じた手数料(収入印紙)を納めなければならなかったり、後に出てきますが訴額に応じて担当する裁判所が変わるので、離婚訴訟などに対しても訴額を決める必要があるわけです。
ルール③:訴訟を起こす裁判所を間違えない!
日本には、
という5種類の裁判所がありますが、訴訟を起こす時、どんな内容の訴訟を起こすかで担当する裁判所が変わってきます。
これを管轄裁判所といいますが、管轄裁判所を間違えると同様に受け付けてもらえません。
じゃあどの裁判所へ訴状を出したらいいかはどう判断するの?っていうところなんですが、管轄を判断する基準として、
- 事物管轄
- 土地管轄
というものがあり、ここで選びます。
1. 事物管轄:訴額に応じて訴訟提起する裁判所を判断する
まず、訴額を基準に裁判所を判断しますが、大前提として、第1審(最初の訴訟)は簡易裁判所か地方裁判所で行います。(離婚等の家事事件は家庭裁判所)
ではどちらの裁判所かは
訴額が140万円以下→簡易裁判所
訴額が140万円を超える→地方裁判所
という形に分けられます。
※ 例外として、不動産に関する訴訟の場合は、訴額が140万円以下でも地方裁判所が管轄となります。
2.土地管轄:どの地域の裁判所が扱うかを判断する
どの土地の裁判所が管轄になるかはいくつかパターンがあるので細かい話は省きますが、基本的には被告の住所(法人であれば本店所在地)を管轄する裁判所になります。
(今更ですが、訴訟を起こした人を原告、起こされた人を被告といいます。)
こっちが訴訟起こしてるんだからこっちの住所の管轄でいいだろ!って思う人もいるかもしれませんが、もし訴訟提起後に裁判のために裁判所へ行くことになった場合、原告は準備してるからともかく、被告からしたらいきなり訴えられた上に相手の住所の方(下手したらめっちゃ遠いかも)まで行かなきゃいけないとなると、スケジュールも空けなきゃいけないし負担も大きくなります。
それはさすがに不憫なので、被告の住所の方で裁判がされることになります。
これらをふまえると、例えば、東京地方裁判所は「東京」が土地管轄、「地方裁判所」が事物管轄ということになり、事件に応じて裁判所名が変わっていきます。
ルール④:提出書類を揃えよう!
訴状の内容・訴額・提出先の裁判所が決まったら、訴状を提出します。
訴状を出すにも一定の決まりがあります。
まず、書類は裁判所用に1部出せばいいというものではありません。
裁判所と同時に、被告にも書類が送られる必要があるので、合計最低2部は必要になります。(手元に控えが必要であればその分も1部必要です。)
裁判所用の書類を正本、相手用の書類を副本といいますが、訴状の正本にはルール②で書いた訴額に基づいて出された手数料額の収入印紙を貼って提出します。
訴状の提出とばかり言っていますが、実際に出すとしたら訴状だけではありません。
裁判所が以後その裁判に関して書類を郵送する際に使う切手(予納郵券)や、訴えを証明するような証拠書類も訴状と同じ部数必要です。
ちなみに弁護士が代理人となって訴訟提起する場合は、ただ証拠を出すだけでなく、それぞれの証拠の情報やそれが何を立証しているかを記載した証拠説明書という書類を一緒に作成して提出しています。
一般の人が書類を作るのと弁護士が作るのでは見やすさや内容の伝わり方もだいぶ変わってくるでしょうから、裁判所からの印象も違ってくると考えられます。
他にもいくつか添付書類はありますが、それらと訴状、印紙、郵券、証拠説明書、証拠などをまとめて、裁判所へ提出します。
受け付けられてからが本番!
それらが無事受け付けられると、各裁判所の中の担当部署へ記録が回り、担当の裁判官・書記官が決まって、書記官から「期日(裁判の日)を〇月〇日にしますー」という連絡が入ります。
期日にもいろいろあって、
- 口頭弁論期日:書面に基づいて攻撃や防御をする。法廷で行う。
- 弁論準備期日:争点や証拠の整理をする。担当の準備室などで行う。
- 進行協議期日:審理の進め方などについて協議する。
- 和解期日:お互いに出頭して和解するよう進める。
などなど形式は様々です。
第1回に関しては「口頭弁論期日」となり、いわゆる法廷で行うような裁判になりますが、その後は「弁論準備期日」という法廷以外で行う期日が入ったり、裁判が進んでいけば「和解期日」や裁判が終わる「判決言い渡し期日」などが入るようになります。
どう進んでいくかは裁判所が判断します。
今まで原告目線で書きましたが、少しだけ被告目線で書くと、原告が訴状を提出して期日が決まった後、裁判所から被告宛に、「〇〇年〇〇月〇〇日に〇〇裁判所の〇〇号法廷に出頭してください。」といった内容の呼出状が送られます。
・・・そう!第1回期日は被告の都合抜きに日程が決まるのです!
なんて理不尽なんだ!って思った全国の被告さん!安心してください!
必ずしも出頭する必要はありません!
もちろん、何もしなくていいというわけでもありません。
被告は、訴状が届いたらそれに対して「答弁」という形で返答をしなければいけません。ただ勝手に決められた期日に必ず来て答弁しろというのも酷い話なので、期日に出頭しない代わりに「答弁書」という書面を提出することで、当日行って答弁したことと同じ扱いになります。これを「擬制陳述」といいますが、答弁書を出しておくことで無理矢理スケジュールを空けて裁判所に出頭するという事態は免れます。
なお、答弁書を出さず、第1回期日にも来ないとなると、その時点で原告の要求が全て認められるので要注意です。
裁判が始まって期日が行われていくと、その期日(もしくは指定された書面提出期限)までに証拠を追加していったり、それぞれの主張をさらに裁判所に対してするような書面(弁護士がつく場合は主張書面や準備書面といった形で作成されることが多いです。)を提出して、お互いの主張をぶつけていきます。
裁判期日と聞くと長時間議論しているようにも思えますが、実際の民事訴訟の期日は1回30分くらいで、それを月1回くらいのペースで進行していくようなものが多いです。
期日が進んでいく中でお互いの落としどころがつけられて、判決より前に話がまとまれば和解になり、話がまとまらなければ判決言い渡しという形で裁判所に判断をゆだねることになります。
ちなみに、判決というと法廷で皆が聞いている中言い渡されるようなイメージもあるかもしれませんが、実際には判決のために出頭する必要はなく、内容(主文)は後から電話で聞いたりします。
ざっくりですが、こんな感じで訴訟の提起から判決までが進んでいきます。
まとめると、
- 訴状はルールに沿って作り、提出しよう!
- 訴えられたら返答することを忘れずに!
- 事件の進行の仕方は様々!
まとまったかは謎ですが、少しでも誰かの参考になれば幸いです。
以上、鈴木くんでした。